ヨガは哲学から由来しているもの
ヨガの起源は、紀元前1,500~500年ごろにさかのぼります。
当時の世界史でいうと、ちょうどインダス文明に当たり、ヨーロッパ遊牧民のアーリア人がインド北西部に進出して部族社会ができたころ。
このアーリア人が、部族社会の統率のために作ったとされる「ヴェーダ」と呼ばれる大教典が元になっています。
もともとヨガは、健康予防のホリステックな内容のヴェーダの一部で、その方法を用いてのちにブッダを治療したともいわれ、この方法は現在、インドの伝承医学でもある「アーユルヴェーダ」の一部として紹介されています。
アーユルヴェーダはホリスティックな内容が中心で、主に「カラダ」についての治療法を記されているのに対し、ヨガの奥義疏と言われてる「ウパニシャッド」は、「ココロ」の治療について書かれています。
そこから紀元前5世紀~2世紀ごろ、神々を題材とした人間の心情を描いた大叙事詩「ヴァガバット・ギーター」が出来上がり、その教えから生まれたのがヨガの教科書「ヨーガスートラ」と言われています。
そのことからも解るように、古代インドでは、ヨガの目的や意義というのは、身体の健康だけではなく、心の健康のために作られた、ということになります。
ラージャ・ヨーガ
世界で初めて体系的なヨガとして始まったのが、紀元前4世紀にはじまったパタンジャリという心理学者が提唱したラージャ・ヨーガとされています。
現在でもヨガの教科書としてヨガ愛好家の方に使用されている「ヨーガ・スートラ」に、ラージャ・ヨーガの実践方法については詳細に記されています。
ここでは8段階の練習段階があると記されていて、そのことを8支則(アシュタンガ)と言いますが、現在でも人気なヨガの種類であるアシュタンガヨガはこの教えを実践していると言えます。
1)ヤマ/禁戒
・アヒンサー/非暴力
・サティヤ/正直
・ブラフマチャリ/禁欲
・アパリグラハ/不貧
2)ニヤマ/勧戒
・サントーシャ/知足
・スヴァディヤーヤ/聖典の朗読
・タパス/苦行
・イシュワダ・プラニダーナ/神への信愛
3)アーサナ/坐法
4)プラーナヤーマ/調気法
5)プラティヤハーラ/制感
6)ダーラナ/疑念
7)ディヤーナ/瞑想
8)サマディー/三昧
ヨーガスートラでは、全4章に渡り、195のスートラ(経文)が記されており、各章に分かれてヨガの目的や実践方法、ヨーガによって得られる効果(超自然力)、実践によって得られる境地への道すじが書かれています。
ヨガの目的をヨーガスートラから紐解く
ヨーガスートラの第1章には、主にヨガの定義や目的が記載されています。
その第1節目に書かれているのがヨガの目的で、そのあとはすべてその解説となっています。
ヨーガ・チッタ・ブリティ・ニローダハ
ヨーガとは心を死滅させることである。
これが意味することは、以下の通りになります。
・心の選択について(安定と平静)
ヨーガでは「あなたの心が安定した静けさに導くものは何か」という判断基準を使って、人生の様々な決断をしていきなさいと説いています。
この意思決定の技術を身につけて鍛錬することが、心の平和と自己実現の近道です、とパタンジャリは説いています。
周りのジャッジや評判・流行などに左右されることなく、自分にとって必要なもの・そうでないものを正しく見分ける、あるいは、今自分がいる場所が正しい場所なのか・もしくは間違っていないかを常に自分に問うことが大事であると言っています。
自分に必要なものだけを選び、正しい場所にいるといえる時、執着の無い(vairaguya)精神で、行動することができるのですよ、と説いています。
また、のちの章で出てきますが、ヨーガスートラでは、私たちの普段の思考や言論、行為などによってヨガの実践を妨げてしまう否定的要素が27もあると説いています。
例えばネガティブな感情。この原因となるものは大きく3つに分けられます
怒り・欲望・妄想している 心の状態
そしてその原因も3つ
自分が原因のもの・他者が原因となるもの・思考が原因となるもの
そしてその精神状態も3段階に分かれ
軽度・中度・強度
に分かれるのだと説いています。(27パターン)
これだけの複雑な重軽度も様々な状態から抜け出す唯一の方法は何か、それもパタンジャリは教えてくれます。
自分が誤った方向に進んでいないか繰り返し自覚することだ。
誤った行為は結果的にずっと惨めさを、味あわなければならないのだ。
と説いています。日々の心もちにより、深い瞑想の扉が開かれていきますよ、とパタンジャリは教えてくれています。
さあヨガの実践をしてみよう
現在、ヨガの種類は数百と言われており、様々なヨガの流派が誕生しています。
それぞれ素晴らしい意味や目的を持っていますので、まずは様々なヨガに触れ、自分に合うものから始めてみるのが良いのではないでしょうか。
ヨガでは「アーサナ」という運動を推奨していますが、もともとパタンジャリのヨーガスートラでいわれるアーサナは瞑想をするための「あぐら」などの坐位の姿勢を指します。
しかし、長く座る瞑想に耐えれるだけの体力や集中力を養うために、あまり普段見慣れないようなポーズ(アーサナ)の練習をすることで体の柔軟性やしなやかな筋肉を手に入れることができ、集中力も増すので心身を整えるのです。
普段の簡単な運動と心の在り方を整える、これが本来のヨガの目的と実践。
心がうつろいやすい方は、少し難しいヨガのポーズを練習してみるのも良いかもしれませんね。
集中力としなやかさが養えます。
ヨガ習慣で、豊かな人生を手に入れてください!